最近とある友人が家電量販店の真空管ヘッドホンアンプをえらく気に入ってしまって、ちょうど彼の誕生日が近かったので、真空管を使ったヘッドホンアンプを作ってあげることにしました。
今まで真空管を扱ったことがなかったため多少戸惑いましたが、今回作る「YAHA ヘッドホンアンプ」は大変シンプルでよくできており、100Vなどの高電圧を必要とせずに12VのACアダプターで動くという扱いやすいアンプです。
今回はとりあえず「真空管の音を聴く」ことを目標に組み立てました。
まずは回路図を・・・と言う前に、真空管ですからかっこよさは大事ですね(笑 そこで今回アンプのケースとして、ビンテージの鉄製の缶が手に入ったので、ここにアンプを入れようと思います。多分これが今回使った部品の中で一番高かったかな・・・(汗
何でしょうね。お菓子の缶ですかね。化粧品の缶ですかね。金色でおしゃれです。
それでは回路図といきましょう。
回路はネットの作例をいろいろ参考にして、プレート抵抗代わりに定電流ダイオード(CRD)を使ったり、音声信号部分に直列に入る抵抗を省いたりして、音質向上を図りました。
・真空管
ジャンクショップで手に入れた12AU7。うっすらと「12AU7」の文字が見えます。元々は筆記体で「Toshiba」と書かれていたのですが、ソケットから抜き差しするうちに指で印刷をこすり落としてしまっていたようです。大事に扱いましょうね・・・
真空管のピンアサインは、真空管の「裏」から見て「時計回り」に「切り欠き→1→2→3・・・8→9」となっています。今回は9番ピンは使用しません。中に内蔵されているヒーターは6.3Vのものが2つ直列に入っているようですが、今回はその直列のまま12Vにつなぎます。6.3V x 2で使いたい場合に、4-9 と 5-9 にそれぞれ6.3Vをかけます。
ソケットの真ん中には、金属製の細くて短いパイプにより、穴が開いています。ここには回路のアースを繋ぐべきなのでしょうかね?今回は何も繋がない代わりに、丁度手持ちの白LEDを差し込んだらぴったりだったので、これで真空管を裏からライトアップしようと思います。
・定電流ダイオード(CRD)
0.1mAのものを使いましたが、定電流ダイオードは電流のばらつきがひどいです。なので今回はテスターで測って特性の揃った2本のペアを使いました。テスターで測るときは「電池+3V → CRD ー|>|ー → テスタ電流計 → 電池0V」のように直列につなぐと測れます。
・コンデンサー類
信号に直列に入るカップリングコンデンサーは、入力側にはPPフィルムコン「岡谷工業LE」、出力側には「ニチコン KA」とLEをパラに使いました。LEは邪魔しない感じの、それでいて音をスッキリさせてくれます。KAは低音が強くなるかな。
電源平滑のデカップリングには、LEとタンタルコンデンサ、PC用低ESR電解をパラに入れました。タンタルは耐圧ギリギリで使うと最悪燃える危険性が有るらしいので、余裕をもって25Vのものを使用。逆にOSコンとかの高分子個体コンデンサは耐圧近くで使わないと音がこもって能力発揮しないですね。
・電源周り
ACアダプターにはテキトーなスイッチングアダプターを使いました。真空管とオペアンプにはノイズの少ない電源を供給するため、コイル(L)を適当にはさみました。極性の違うACアダプタをつないだ時の逆接防止にダイオード(D)(透明なガラスに入ったものではなく、電源用に使われる黒い円柱状のタイプ)をはさみましたが、これでは前に入っているLEDを守れないので、、これはもっと前に入れるべきだったと作ってから思いましたね(汗
・オペアンプ
今回はLME49860を使いましたが、ユニティゲイン安定のものでしたら何でも良いでしょう。
・ボリューム部分
可変抵抗部分はマルツ・LINKMANの「R1610G」を使用。音はいいけど、ギャングエラー(左右の音量差)とちょっとガリがある。ギャングエラーについては、可変抵抗の裏の六角ネジである程度調整可能。(nabeの雑記帳 「ボリュームの聴き比べ」コメント欄にて http://nabe.blog.abk.nu/volume)
10kΩの直前に入っている47kΩは、鳴らしてみてゲインが高すぎたので入れました。金属皮膜抵抗の多摩電子工業LFを使用。
それではさっそく組み立てていきましょう。
基板に部品をハンダ付け。
そしてケースの加工。軽く位置合わせをしてから・・・
ソケットが入るようにドリルで丸く穴を開けます
繋がったところをニッパーで切り落とし、バリはゴリゴリペンチの背で潰します。
スッポリ。
スイッチ、ボリュームを取り付ける穴も開けたので、仮組み。
真空管と基板を配線します。カラフルな銅の単線。でもごっちゃ。一体どの線を束ねて良いのか悪いのか・・・
とりあえず完成。電源を入れると・・・
真空管がライトアップ。かっちょぇぇ
音出しも一発でした。
・試聴した印象
真空管の音質ってよく「柔らかい音」という評価がされますが、僕はそれと同時に「音がシャープになる」という印象を受けます。真空管は倍音成分?が付与されるという噂ですが、それのせいか高域が伸びて、突き刺さるような、でも疲れない降ってくるような高音になりました。ジャズなんかにも良く合いますが、意外にテクノミュージックも鋭さが増してよく聴けます。
今回作ったYAHAアンプは、ぺるけさんの詳しい解説によると、線形性の悪い領域を使っているため、歪は大きいようです。そのせいか、半導体のアンプのような緻密な分解能はありませんが、その代わり音が一つ一つ生き生きしているような感じがします。半導体のアンプは緻密だけど部屋の中で演奏している閉塞感があり、このYAHAアンプは荒っぽいけど野原で楽しんで音が踊っているようなイメージがします。(ちょっと痛い書き方になりましたね・・・)
・課題
音楽を鳴らしているときは気になりませんが、無音時になぜか「ブー」という電源ノイズが乗ります。試しにGNDをケースにアースしたところ、だいぶ改善されましたがまだ聞こえます。配線のせいでしょうか。意外とACアダプターを変えたら直ったりして・・・
いやぁ、しかし楽しい音だ。
前回のウーファー用アンプもそうですが、人にあげようとすると気合の入ったものになるから、自然と自分の気に入るものができてしまうんですよね・・・いとくちおし。
でも、今回初めてきちんと「真空管の音」なるものに触れることができてよかったです。みなさんも試してみてはいかがですか?