LT1399 Video Buffered Headphone Amplifier


たけやぶです。今回新しく安価で音のいいヘッドホンアンプを考案したので公開したいと思います。

【新着情報】
2026年5月1日(金) 皆様からの反響を後半に追加しました。
※本記事は、2023年12月設計の「LT1399 Video Buffered Headphone Amplifier」にまつわるものになります。こちらは終売となりましたが、クロストーク改善版の「VALKYRIE 1399」は現在BOOTHにてキット・完成品を販売中です!
https://sinc-func-audio.booth.pm/
「VALKYRIE 1399」については近日中に別途記事を作成予定です。

【概要】
アナログビデオ用の高速電流帰還オペアンプ「LT1399」を出力段に採用した、駆動能力十分のヘッドホンアンプです。簡易評価では30Ω/1000pF負荷においてTHD -97dB、1Vpp立ち上がり時間は400nsを達成しました。
Quant Asylum QA401 オーディオアナライザによる測定
立ち上がり時間の測定。30Ω+1,000pF負荷, 1Vpp 400ns程度で立ち上がり
【きっかけ】
かつてはオペアンプだけのヘッドホンアンプを作り楽しんでいました。しかしふと、出力段に高速電流バッファであるLME49600を使用したヘッドホンアンプを中古で購入したところ、その弾むような生き生きとした音に魅入られてしまいました。このような電流バッファを用いた作例は、ほかにもLT1010BUF634などを使用したものが有名なようです。
しかし、これらのバッファICはどれも1,000円以上と高価です。しかもステレオL/R+レールスプリッタで3個も必要となります。
一方で、ディスクリートでいわゆる「ダイヤモンドバッファ」を使用した作例もかつて作成したことがありましたが、こちらはなんだか音がボケてしまい私の好みに合いませんでした。
「要は、出力段がダイヤモンドバッファの形をしたICを探してくればよいのでは?」
そう考えて秋月電子のWebサイトを片っ端から漁っていると(当初は適当なスピーカーアンプを電流バッファに使用することを考えていた)、なんとおあつらえ向きのICがあるではありませんか。それが「LT1399」でした。
LT1399 Simplified Schematic (https://www.analog.com/jp/products/lt1399.html)
こうしてみると、確かに出力段が見慣れたダイヤモンドバッファの形をしているではありませんか。出力電流80mA、 帯域300MHz、しかもIC1個300円の中にRed, Green, Blue用ということで3chもこのバッファ回路が入っていると!いいじゃんいいじゃん、と思いましたが、ここで初めてこれが「電流帰還オペアンプ」であることに気が付きました。
電流帰還オペアンプ?ハテ。
参考資料を見ながら、ひとまずLT1399はボルテージフォロアとして使うのであれば、365Ωの抵抗と抱き合わせればよいとわかりました。この365Ωは電流帰還オペアンプの品種ごとにメーカーが出している推奨値であり、これより大きい抵抗値の場合は帯域が狭くなるだけであまり困らず、逆に小さい抵抗値を選んでしまうと帰還が掛かりすぎてしまいよくないとのことでした。
(参考資料: OPアンプ活用 成功のかぎ (cqpub.co.jp) (川田章弘 先生)
【電流帰還型OPアンプの基本】電流帰還型OPアンプの基本的動きの解説 他(浜田聡 先生) )
そうと決まれば後は適当なオペアンプで外から帰還ループに入れてやるだけです。電流帰還オペアンプは普通の電圧帰還のオペアンプと比べて1桁帯域が広いことから、普通のオペアンプの帰還ループに入れても発振を起こさず、いい子です。(ただし、電圧帰還オペアンプのものでもGB積100MHz以上のものと組み合わせるとちょっと怪しいです。) 今回は評判の良い低電圧オペアンプであるLME49721と組み合わせました。
【試作、そしてキット化】
KiCAD 7.0で設計し、PCBGOGOに作成してもらいました。単4電池3本の3.6V~4.5Vで動作します。ちなみにLT1399自体は±6Vまで、すなわち単電源であれば+12Vまで使用できるので、組み合わせられる前段オペアンプの幅も広がります。(逆に下限は+4Vまでなので、3.6Vだとちょっと下回っちゃいますね)
音は強力なドライバ段+レールスプリッタらしい、制動力のある音です。打楽器やギターのカッティングが得意です。ヘッドホンアンプは小電力と侮らず、モータドライバのつもりで瞬時電流を供給してあげないときちんと鳴らないのだとよく理解しました。
詳細評価など詰めが甘いところはありますが、聴く分にはきっとどなたも驚いてくれると思うので、キットと完成品を用意したいと思います。私のツイッター(X)アカウントで時々情報を展開していますので、そちらをご参照ください。キットでは難しい表面実装部品だけを予めはんだ付けしたものをご提供します。
どこかで自作オーディオのイベントがあれば初参戦してみたいな、とも思いますので、おすすめのイベントがあればぜひ教えてください。
=====ここまでが2023年12月までの記事となります=====
ロゴが光るギミック付き (自分用に5V昇圧回路を追加したもの)
【追記: 皆様からの反響】
下記イベントにて、初の出展を果たしました。主催のぽっけさん始め、皆様ありがとうございました。

「ポタオーディオ蚤の市」 2024年2月10日 東京・京橋で開催。 ●出店者 ・@ぽっけ ・Thyris Electronics ・たけやぶ ・TOMOWORKS ・やすし、ちょしろ ●開催場所 中央区京橋2-7-15 鈴木ビル2階 2A&2B (1Fに酒龍馬という飲食店が入っています)

このイベントの前後での実際の皆様の作例・測定結果・反響をいくつか紹介させていただきます。

まずは作例。ブナシメジさんとおぷあんぺさんの作例です。 続いて、ニックネームさんによるレビューと測定結果です。

そしてありがたいことに、このアンプのTHDを測定していただきました。
Lch,32Ω,0.3Vrms – 0.00015%
Rch,32Ω,0.3Vrms – 0.00018%
Lch,「クリップし始めが0.4Vrmsほどの様です。」
Lch,「クリップし始めが0.4Vrmsほどの様です。」
改善点としてクロストークが大きいという指摘をしていただきました。
(これは後続のVALKYRIE 1399にて基板の引き回しを修正し、改善させました) その他、クロストークの低減策など、技術的な部分に関してニックネームさんとぽっけさんに懇切丁寧にアドバイスを頂きました。この場を借りてお礼申し上げます。

【そして新たなモノづくりのきっかけとなる…】

キット・完成品発売後、当アンプがモノづくりの皆様に影響を与えることが出来たようで。皆様から続々と新作が生み出されました。こちらに紹介させていただきます。

まずは先ほども挙げさせていただいたニックネームさん。なんとご本人なりにレールスプリッタアンプの一つの解を模索され、「HAS-piccolo」の名で商品化を果たされました。そしてまた、電流帰還オペアンプをディスクリートで作成された「OPM12」も登場。
私のキットが発売したのが2023年12月。これらが完成したのが2024年1月。驚愕の実現速度です… 続いて、同じくLT1399を使ったアンプを制作されたやすしさん。LT1399を片ch 1つずつ贅沢に使用し、ご自身の両電源と合わせて一つの完成品「YA-LT1399」に仕上げられました。(やすしさんは先の2月10日のオーディオ蚤の市で私のアンプを試聴されたときに物凄いショックを受けたような顔をされていたのが印象的でした…その次の4月27日の「音ン場」でこちらの新作を引っ提げて出展されました。やすしさんも早い!)
そしてやすしさんが私のアンプのために昇圧基板を作って下さりました!私もお譲り頂いたのですがこれが凄い…LT1399の秘めたるパワーを引き出してくれます。こちらを次回2026年5月23日(土)の「音ン場」で披露させていただきます! そして最後に、なんと当アンプのために専用のアクリルケースを作成していただきました。その名もNanashiさん。これがむちゃカッコいい!画像は一番右が当アンプ、中央がクロストーク改善版のVALKYRIE 1399用です。 ということで、私の思い付きで制作したアンプをこうして数々の皆様に見て聴いていただき、お互いに刺激を与えあう関係になれたことに非常に感謝し、また大変誇らしく思いました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

クロストーク改善版の「VALKYRIE 1399」の記事を別途今月中に作成予定です。なぜなら2026年5月23日(土)にまた「音ン場」がありますから。

改善点や商品の案内、そして取り上げることの出来なかった皆様の作例もご紹介したいと思います!こうご期待。